『月とコーヒー』あらすじ(どんな本か)
『ジャイロスコープ』のブログの時も書きましたが、短編集のあらすじって難しいですよね。
なのでどのような本なのかの説明にします。
24の短編集が集められています。
だいたいのお話に月かコーヒー、または月とコーヒー。
でも、どっちも見当たらなかった短編もある(たぶん?)読み直しても見つけきれなかった。
一日の終わりの寝しなに読んでいただく短いお話を書きました
と著者はあとがきで書いています。
なるほどな読後感です。
え?これってこれから話が展開していくんじゃないの?
ってなところで終わってしまいます。
物語のその後を想像しながら夢の中、ということらしいです。
そしてなにより出てくる料理がとても美味しそう。
(これは私のなかでもポイント高い)
著者:吉田篤弘ってどんな人?
吉田さんのことは「クラフト・エヴィング商會」で知りました。
『ないもの、あります』
『注文の多い注文書』
『じつは、わたくしこういうものです』
架空のものや架空の職業を紹介する本たち。
不思議で魅力的で虜になりました。
なんだろう?吉田さんの文章はじんわりといいんです。
記憶に残る名文がそこかしこに散りばめられている、というわけではないのですが、なんか読んだ後に、すごくいい感じだったなぁって思える文章。
ものすごくいい夢を見ていて起きたら覚えてないんだけど、なんか幸せの余韻が残っている時みたいな感覚です。
『月とコーヒー』の感想
いくつかの短編をピックアップして感想を書いていこうと思います。
「青いインク」シリーズ
短編集の中、これだけが連作です。
その人本来の、本当の字を書くことができる美しいインクを作る青年と、そのインクに心底惚れ込んだ女性の話。
青いインクってなんかいいですよね。
なんでだろう。
万年筆が生活スタイルに合わなくなってお休みしてたけどまた使いたくなりました。
自分の価値を他人に決めさせてはいけないけれど、人は自分の世界の中だけでは自分の価値に気づきにくい。
自分の世界に他人が入ることによりその価値に気づくことができる。
そんなことを思う小説です。
「セーターの袖の小さな穴」
”ぼく”はある日仕事を失いました。
幸いにもある程度の貯えがあるので困っていないので、今しかできないこと”旅”をしようを思いました。
考えた結果”ぼく”が選んだのは3駅となりの町に旅行し、そこの自分なりの地図を作ること。
その町で〈チケット〉という理想的な喫茶店を見つけ、通って地図作成と読書をすること。
そして最後に”ぼく”がであったものは……
なんて素敵な旅。
旅行先の土地をゆっくりと知っていくことは何よりも贅沢な旅です。
”ぼく”の時間の使い方が贅沢でうらやましく、うっとりと読んでしまいました。
「二階の虎の絵」
この本の中に出てくる食べ物が一つだけ食べれますよと言われたら迷わずこの短編に出てくる〈たまごのケーキ〉です。
脈々と受け継がれてきたケーキ作り。
作る過程がまた美しい。
並ぶの嫌いだけどこのケーキの為なら並んでいい。
『月とコーヒー』はこんな人におすすめ
- 寝入るまで読む本を探している人
- 不思議なお話が好きな人
- 美味しそうな食べ物が出てくる話が好きな人
- 心を落ち着けたい人
- 話の続きを妄想するのが好きな人
なんでも結果が知りたい、白黒つけたい人には不向きかもしれません。
不思議な世界に連れて行ってくれる本でした。